「職住近接」は、住宅地の価格形成の根本概念である

2011.09.30

都心のオフィス街や商業地を観察していると、日本は、まだまだ腐っても鯛やだという印象を受けます。多種多様な外資系企業が、世界中からビジネスチャンスを狙ってやってきます。つまり、都心の不動産の価値を支えているのは、最終的には彼らが商取引をしている日本人ビジネスパーソンの人知や知的財産だということが実感できます。東京圏の住宅価格は、都内の商業地やオフィス街で働く人たちの人知が稼ぎ出す円の価値によって支払われる賃料や住宅ローンによって支えられています。つまり、世界中に高度な工業製品やソフトウェアを輸出して、それで得た付加価値を、円という通貨に交換して、その一部を賃料や住宅ローンの支払いに充てているのです。それは、肥沃な農地の隣に建つ農家や市場、または物流拠点に価値が生まれるロジックと同じことなのです。職住近接という概念は、農業社会でも、工業社会でも、IT社会でも、姿形を変えて、住宅地の価格形成の根本概念なのです。高額所得層にとって「時間が買える街」が最も尊ばれる東京は、いい意味でも悪い意味でも、時代の最先端を疾走しています。工場は次から次へと消えていき、代わりに金融、商社、IT関連の企業が集中するようになりました。それによって、オフィスビルという名の、高度なナレッジを生む。人知の工場に近接して立地する住宅街の価値は安定し、場合によっては上昇をしています。その立地の優位性をひと言で表現すれば、経済エリート層、すなわち高額所得層にとっては時間が買える街であることです。彼らにとって、ビジネスにおける最大の経営資源は、時間なのです。職住近接というポジションを得ることによって時間を買いたいと望む層は、そこに飛びつきます。そうなると、そもそもオフィス街と住宅街の区別すらなくなってしまうものなのです。そういう現象の本質は、江戸時代に、水運の要衝であった隅田川河口流域に問屋など商人が集まった現象と何ら変わりがありません。

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